『オリエント急行殺人事件』 アガサ・クリスティ 【あらすじ・感想】
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あらすじ
満員の乗客を乗せた豪華列車、オリエント急行にポアロも乗り合わせた。ところが列車は、深夜、ユーゴの山中で立往生してしまった。豪雪にとじこめられたのだ。翌朝、寝台車の一室から死体が発見された。死体には12箇所の刺傷がのこり、個室にはチェーンがかけられていた。密室殺人である…ポアロは捜査に乗りだした。だが寝台車の乗客12人には完璧なアリバイがあった。やがて被害者はアメリカで悲惨な誘拐事件をおこして逃亡した犯人とわかるのだが…ポアロの推理によって明らかになるまったく意外な犯人像とは? クリスティの代表的傑作。 — 本書より引用
読書感想
はじめてクリスティ作品を読んだのは子どものころだった。
母親の本棚にあった「そして誰もいなくなった」を読み毎晩こわくて眠れなくなったことを覚えている。
そして彼女の作品に触れることがないまま現在にいたってしまったのは、子ども時代に感じた恐怖により無意識に避けてきたからなのかもしれない。
今回、なんの脈絡もなく突如、アガサ・クリスティ作品を読もうと思い至った。
本作の主人公、名探偵ポワロ氏は子どものころにテレビドラマで見た記憶がある。カールした髭にこだわりを持つ紳士の姿が思い浮かぶ。
簡単に言えば、ヨーロッパを貫く長距離鉄道のオリエント急行で殺人事件が起き、ポワロがその天才的な閃きでもって事件を解決する作品である。
乗客は国際色豊かでさまざまな人種が乗り合わせており、彼らの特徴を表現する描写に20世紀前半を感じる。なんというか、極端に偏見的な表現がサラッと描かれている。
ついつい笑ってしまうところがある。イギリス人は刺したりしないがイタリア人は短剣で刺す。アメリカ人は進歩的で金に糸目をつけないなどなど。
とくにイギリス人に対する皮肉めいた表現が目立つように思えるのだが、彼女自身のルーツに関係があるのか。(アガサ・クリスティは英米のハーフ)
300ページほどで、ポアロがテンポよく謎解きを進めていくので簡単に読み進めていけるのだが、結末はまったくもって思いもしないものであり、純粋に殺人ミステリを楽しむことができる作品だった。
アガサ作品をモチーフにした日本人作家の作品
アガサ・クリスティの代表作のひとつである「そして誰もいなくなった」をモチーフに書かれた作品を先日読んだ。「今邑彩」という作家の作品でこれがなかなか面白かった。
完全にオリジナルをなぞるといったものではなく、アガサの小説作品を作中に登場させ、作者独自のトリックで事件を描いている。
そして誰もいなくなる (今邑彩) の感想とあらすじ。名門女子校天川学園の百周年記念式典に上演された、高等部演劇部による『そして誰もいなくなった』の舞台上で、最初に服毒死する被害者役の生徒が実際に死亡。上演は中断されたが、その後も演劇部員が芝居の筋書き通りの順序と手段で殺されていく。
著者について
アガサ・クリスティ
アガサ・メアリ・クラリッサ・クリスティ(Dame Agatha Mary Clarissa Christie, DBE、旧姓:ミラー (Miller)、1890年9月15日 - 1976年1月12日)は、イギリス生まれの推理作家である。発表された推理小説の多くは世界的なベストセラーとなり「ミステリーの女王」と呼ばれた。英国推理作家のクラブであるディテクションクラブの第4代会長。メアリ・ウェストマコット(Mary Westmacott) 名義の小説が6作品ある。日本語表記は「クリスティ」「クリスティー」がある。 — Wikipediaより引用
訳者について
古賀 照一
宗 左近(そう さこん、1919年5月1日 - 2006年6月20日)は、詩人・評論家・仏文学者であり翻訳家。本名は古賀 照一(こが てるいち)。法政大学名誉教授。法政大学社会学部と昭和女子大学教授を歴任。 — Wikipediaより引用