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パリ パラリンピック 2024【備忘録】

初稿:

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パリ パラリンピック2024が閉幕した。

パリ2024パラリンピック競技大会

パリ2024オリンピック・パラリンピック大会組織委員会公式ウェブサイト

オリンピックとは打って変わり、テレビ中継や報道はかなり少ない。

日本選手が出場した競技についてはNHKプラスがオンデマンド配信をしていたおかげで見ることができた。

網羅的に視聴したわけではないが、見た協議はどれも画面にくぎ付けになり、たくさんの感動をもらった。

思考したことなどを備忘録としてメモしておく。

テレビ中継で、初めから最後まで試合を見たのは主に以下3競技。

  • ブラインドサッカー 日本 vs コロンビア
  • 車いすテニス 女子ダブルス 決勝
  • 車いすテニス 男子シングルス 決勝

その他、NHKプラスのダイジェストで、柔道、水泳、陸上などを中心に視聴した。

ブラインドサッカー

ブラインドサッカーを見ようと思った動機は競技への注目はもちろんのこと、事前にNHK初のパラリンピック番組「全盲アスリート解説者」として、元日本代表選手・加藤健人さんが解説をされることを知っていたのもある。

音だけを頼りに解説! パラリンピックのブラインドフットボール中継に出演する全盲アスリートに直撃 - スポーツナビ

9月1日に行われるパリ2024パラリンピック・ブラインドフットボール日本代表戦の初戦がNHK Eテレで公開生放送される。…

そして、この試みはとても大切で必要なことだったと感じた。

実況のNHKアナウンサーは主に視覚情報に基づいて試合状況を実況する。だが、実際に試合で起きていること、ブラインドサッカー選手が考えていることは、視覚情報からだけでは分からない。加藤さんの解説により、それが言語化され、視聴者に伝えられたのだ。

私は視覚障害はないけれど、何も見えていないと思い知らされた。

ブラインドサッカー見どころ解説 |パリパラリンピック2024 - NHK

車いすテニス 女子ダブルス

時間が合ったので偶然視聴した。

解説は日本が誇るテニス界のレジェンド国枝慎吾さん。

国枝 慎吾(車いすテニス)|グランドスラム達成の王者|パラサポWEB

車いすテニスプレーヤー/パラリンピックの顔である国枝慎吾(くにえだ しんご/KUNIEDA SHINGO)のプロフィールや過去の成績(連勝記録107勝、前人未到のパラリンピックシングルス3連覇、5大会連続のメダルとなった東京、グランドスラム)等を紹介。東京パラリンピック日本代表選手団の主将。フォトギャラリー有り。

国枝さんの解説で知ったが、パラリンピックの女子テニスはオランダ勢が席巻しているそうだ。シングル・ダブルス共に、ディーデ・デ・グロートという王者が立ちはだかる。

ダブル決勝でオランダに挑んだのが上地結衣・田中愛美のペア。素人ながら前半からの流れでさすがに勝てないかと思いながら見ていた。だが第二セットの中盤から、じわりじわりとオランダ勢を追い込みイーブンへと持ち込む。そしてタイブレークのファイナルセットも勝ち取った。

これまでパラスポーツを視聴してきた中で、もっとも手に汗握る体験だった。

これまでパラリンピック決勝はオランダ勢の舞台であり、今回の決勝は歴史が塗り替わった瞬間でもあった。

そして翌日、シングルス決勝で上地選手は再びディーデ選手を破り、2冠を達成した。

上地結衣が女子シングルスで金! ダブルスと合わせて2冠達成!パリ2024パラリンピック車いすテニス

2012年に初めてパラリンピックに出場してから12年。30歳の上地結衣がついにパラリンピック車いすテニス女子シングルスの金メダルに輝いた!上地は前日の女子ダブルスと合わせて2冠を達成した。

車いすテニス 男子シングルス

比較的、事前に露出が多く知っていた「小田凱人」選手目当てで視聴した。

パラリンピック 小田凱人が金メダル 車いすテニス【詳しく】 | NHK

【NHK】パリパラリンピック、車いすテニスの男子シングルスの決勝で、初出場の18歳、小田凱人(おだ・ときと)選手が、世界ランキング…

ものすごく強い、そして18歳とは思えない落ち着きと自己表現力。試合はドラマに次ぐドラマの連続。国枝さんの解説と相まって素晴らしい観戦体験だった。

相手の英国代表ヒューウェット選手も初の金メダルを目指していた。

第1セットでヒューウェット選手は足の付け根を痛め、ワンサイドゲームでロスト。このまま小田選手が勝利すると思いきや、ヒューウェット選手が執念を見せる。第2セットを奪い返し、第3セット、最初にゴールドメダルポイントに手をかけた。得意のドロップショットを放った瞬間、負けた!と思った。試合直後のインタビューで小田選手も思ったらしいことがわかった。

だが、数センチ、ほんの数センチボールはラインの外だった。その後、流れはヒューウェット選手に戻ることはなかった。そして、押されている中、逆境を楽しむかのようにプレイする小田選手が勝った。

ためらうことなく自分をコートで表現する姿に、次の時代はこういう人たちが作っていく気がした。

女子48キロ級 全盲

ちょうど小田選手の試合を視聴中、速報で女子48キロ級 全盲の決勝を戦っていた「半谷静香」選手が銀メダルを獲得したと速報が流れた。

パラリンピック 柔道 半谷静香が銀メダル 女子48キロ級 | NHK

【NHK】パリパラリンピック、柔道の女子48キロ級、視覚障害の重いクラスで半谷静香選手が銀メダルを獲得しました。半谷選手はパラリン…

10年ほど前、偶然、私は半谷選手と同じマンションに住んでいた。「白杖を持っている人が住んでいる」とだけ認識していた。が、あるとき会話する機会があり、そこで柔道をやっていることを知った。

以降、パラリンピックのたびに応援していたが、なかなかメダルには手が届かなかった。そして今回、悲願のメダル、しかも銀メダルを獲得した。

全盲で戦うのがどういうことか私は完全に理解することはかなわない。だが、半谷選手が戦う姿を通じ、その世界を想像しようという動機が生まれる。彼女の挑戦は、目が見える私の何倍も勇気が必要であろうことは分かる気がする。

障害について

私も含む健常者は五体満足であるにもかかわらず、更なる快適さを求め続ける。最新テクノロジーの社会実装も、まずは健常者のラグジュアリーがターゲットだ。

一方で障害を抱える人々。一向に実現しないバリアフリー、バリアだらけの社会で生きることが常態化している。

便利さ快適さは身体を退化させる。

パラ競技を見るたび、パラアスリートは常にホモ・サピエンスが秘める可能性を絶えず開花させていると実感する。

パラリンピックがほとんどの競技でオリンピック記録を上回る日は近い将来おとずれると思う。

パラ競技から感じることもう1つ。人類史をふり返ると、どの時代のどの場所でも、新しい時代のマジョリティーは前の時代のマイノリティーである。

パラアスリートは筋肉はもちろん、脳や感覚器官も健常者とは異なる使い方をしているそうだ。新しい世界の萌芽が育っている気配を感じる。

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