網膜色素変性症と向き合う
初稿:
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記事概要
数年前からモノが見えづらくなった。加齢によるものとあきらめていたが、2年ほど前からいよいよ生活に支障を感じ、近所の眼科へ通い始めた。
処方された目薬を点眼し、眼鏡をかける生活となった。だがあまり効果は無く、悪化の一途をたどる日々だった。今年に入り、大きな病院で検査を受けるようにすすめられた。
そして先日10月12日の土曜日、「網膜色素変性症」と担当医から指摘された。確定診断ではないが、検査結果からほぼ間違いないだろうとのこと。
40代も後半に入ったところで思いがけずも残りの人生で失明する可能性を指摘された。
若かりし頃の視力はいつも1.5。目に問題を感じたことがない人生だったが、こんなこともあるのだ。
のちに振り返ることができるよう現時点での症状、検査結果に対する心境を記録しておきたい。
網膜色素変性症とは
網膜色素変性症は、目の内側を覆っている網膜という組織に異常をきたす遺伝性、進行性の病気です。 — 網膜色素変性症(指定難病90) – 難病情報センターより引用
上記リンク先に書かれている内容を要約する。
- 目の網膜という組織に異常をきたす遺伝子疾患
- 遺伝性・進行性の病気
- 通常4,000人から8,000人に一人発症する指定難病
- 機能回復および進行を止める確立された治療はない
- 原因となる遺伝子変異は多くの種類があり進行の早さには極めて個人差がある
- 夜盲、羞明、視野狭窄などを経て最悪の場合失明にいたる
またYoutubeで見た医師による説明動画で得た情報。
- 網膜色素変性症は失明原因の第2位
- 遺伝ではないケースが半分ぐらいの割合でみられる
- IPS細胞による治療が人体に対し行われた実績がある
参考動画
現在の私の症状
夜盲
夜盲症は暗いところで目が見えにくくなる症状のことです — 夜盲症(鳥目)とは? - 眼とメガネの情報室 みるラボより引用
網膜色素変性症の症状としてまず現れるのが「夜盲」であると担当医から説明を受けた。
自覚症状が無いように思っていたが、思い返してみると、いつからか暗い映像の内容を識別できなくなっていたことを思い出す。
映画やドラマで暗闇の中で何かをしている場面はまったく様子がわからない。
また電気を消した後、以前なら少しずつ暗闇に目が慣れていったように思うが、そういえばずっと暗いままだ。
性格的に不便さを安易に受け入れてしまいがちなので、普通にスルーしていたのかもしれない。
羞明
羞明(まぶしく見える)、または光過敏とは、光に起因する目の不快感です。 太陽光、蛍光灯、白熱灯などすべての光源が不快感の原因となり、目を細めたり閉じる必要があります。また、頭痛を伴うこともあります。 中には、非常に明るい光だけが気になる場合もありますが、極端なケースではどんな光でも刺激となります。 — 羞明:光過敏の症状と原因より引用
視力低下を感じるようになった後、この症状に悩まされるようになった。これを近所の眼科に相談したことが大学病院での検査にいたる経緯となった。
日中、外にいるのがとにかく辛くなってしまった。コンビニなど蛍光灯の強い光に埋め尽くされた空間も同様。まぶし過ぎて見づらく、それが不快でイライラとした気持ちになってしまう。
また、背景が白いとその中にあるものが視認できない。例えば、白いテーブルの上にある白い皿はまったくと言っていいほど見えなくなっていた。
思えば、30代に入ってからパソコンやスマホの画面が見づらくなっていた。「ダークモード」が一般的になるまえから積極的に利用していたことを思い出した。
振り返ると、ずいぶん前から少しずつ症状が現れていたことに気づかされる。
視野狭窄
視野狭窄とは、なんらかの病気が原因で、目の見える範囲が狭くなっている状態のことです。 — 視野狭窄とは?症状、関係のある病気、チェック方法を解説 | Spotliteより引用
検査の結果、視野の中心と周辺は見えるが、それ以外の部分がドーナツ状に欠落していることがわかった。
「見づらい」「見えにくい」と思っていたが、そもそも見えていなかったのだ。
欠落している部分が真っ暗かというと、そうではない。不思議なもので、脳が周辺に近い色で補正をする。よって、視野欠落を自覚するのは案外難しいのかもしれない。
こうやって原因がわかると思い当たることがいくつも浮かんでくる。
- 読書や記事を読むとき、縦書き横書き問わず隣の行が見えない。
- パソコンを操作しているとき、マウスカーソルを見失う。色や大きさを変えてみたり、ショートカットキーでカーソルの場所をハイライトするツールを使ってみたりしたが、あまり効果が無かった。
- サッカーなどを視聴しているとき、画面左右に長く移動するロングパスなどのボールを見失う。
- すぐ目の前にあるものへの反応が遅れる。これは視野の欠落の仕方に関係があるかもしれない。
- こまかく動く小さな虫が見えない。パートナーがよく敏感に気づくが私は見えていないことが多い。
診断を受けた心境について
羞明の症状を近所の眼科医に相談したのが8月3日。そこから大学病院の予約、検査と続き、診断を受けたのが10月12日なので約2か月。
この間、特に不安な気持ちになることもなく、目はどこまでも悪くなるのかもしれない、うっすら考えていた。
担当医に「網膜色素変性症」と言われたとき、「そんな病気があるのか」という驚きと、原因がわかりかえってホッとした気持ちがあった。
説明を受けた症状が、これまでに経験したことと次々に結びついていく。悪い話であっても人は納得できると安心するのだ。
遺伝子の病気であること、進行性で将来失明するリスクがあること、指定難病で有効な治療が無いことも説明を受けた。
思いの外、ショックはなかった。ぼんやりと「いつか見えなくなるのか」と考えていた。
すぐに全盲になるわけでもないから実感が湧いていないだけかもしれない。
また、これは確認したわけではないが、「一緒に勉強して向き合っていきましょう」と言われたこともあり、担当医は網膜色素変性症を初めて診断したように感じた。
杆体、錐体、ジストロフィーなど、病気を調べるためのキーワードをいくつか教えてくれた。
研究中の治療例もいくつか話してくれた。
まずは担当医を信頼し、真面目にこの病気について勉強しようと思った。
今後について
人の一生において大きめの出来事だと思うが、ぼんやりとした心地だ。
一方、同じタイミングでパートナーが大きめの手術を受けたこともあり、こちらの方が気がかりでならない。
お互い人生何があるかわからない。
12月に次の診察がある。その時に「ロービジョンケア」を案内すると言われている。
それまで、ネットや書籍を頼りに網膜色素変性症について知識を蓄えておこうと思う。
また知覚障害者がこの社会をサバイブするための知見も備えていきたい。
いつか私が失明してもしなくても、今回のことをキッカケに視覚障害と深くかかわる人生に舵を切ると決めた。